ワインと関わっている限り避けて通れないのは「ブショネ」です。
近年は醸造環境の適正化、コルク及び打栓機の進化によってブショネ発生率低減が大きく図られている。
この技術の進歩は飛躍的でありワイン醸造のそれを大きく凌ぐものと言えます。
いかに世界中のワイナリー、コルクメーカーがこの問題に悩まされてきたのかが伺い知れるというものです。
しかし問題はそうかんたんではありません。
ブショネ、及びそのほかのワインコンディション不良そのものがゼロになることは無く、しかもそれを判定するのはやはり「人」だということ。
それに追い打ちをかけるようにワインのあり方も多様化してます。
ヴァンナチュールの存在でワインの健全性というものが迷走化したことは事実です。
:そこで「販売する側」からの視点での思うところ。
これまで勤務してきたお仕事のなかでとある事例があります。
年間数万本のワインを流通させていた会社に在籍してました。
事例①
とある納品先では低価格帯ではあるものの、納入する本数は一月に数百本に及びます。
しかし、そのグループから「ブショネ」を始めとするワインのコンディション不良にともなう返品依頼はほとんど ”皆無” だったのです。※年に1、2回くらい。
事例②
席数10席前後、1ヶ月に納入する本数は2ケースにも満たないワインバー。
ほとんどの確率で1本はブショネ返品で戻ってきます。
そして検証してみるとこれがたしかにブショネなんです。
もちろん、扱っているワインの内容にも違いはありますしスクリューキャップの銘柄も含まれていたわけです。
しかし後者の店舗でも高額品ばかり納品しているわけではなくデイリーのボルドーなども収めています。
確率からいっても多くのワインを使っていればそれだけブショネとあたってしまうはずなのですが不思議とそうならない。
それはなぜか。
①判定できるか否か、なんらかのコンディション不良のワインがあったとしてもそのままスルーして提供されてしまっている可能性があります。
②そもそもブショネ等のワインを返品対応できるということを現場のスタッフが知らない。 なのでそのまま在庫処分して済ませてしまっている。
そこで、ワインのコンディション不良の見極めに自信がない飲食店関係者はけっこう存在するのではないかと思います。
そこが問題。
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事実、こんなケースがありました。
「私は先輩や上司に教わったことがないのでブショネとかわかりません」と、言い切られたソムリエさんもいました。
その方は比較的若手、飲食店のキャリアはナチュールワイン専門のビストロでした。
なのでオーセンティックなワインに関して経験が無い、と認めてしまっているのです。 なかなか大胆は発言ですね。
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かつて、こんな話もありました。
むかーし、昔とある大手インポーターさんの試飲会にて。
A氏:「Bさん、このワイン、ブショネだから飲まない方がいいですよ!」
B氏:「え!? そうなんですか?」
インポーター氏:「????」
A氏:「Cさん、このワイン、ひどいブショネですよね」
C氏:「・・・、そうかぁ? 大丈夫だと思うぞ、Aさん、あんまり変なこと言うなよ、みんな迷惑してるだろ」
A氏:「・・・・」※納得いっていない様子。
「完」
■キャスト
A氏:意識高い系飲食店オーナー
B氏:通りすがりの若手ソムリエ
C氏:業界の重鎮ソムリエ
インポーター氏:泣く子も黙る大手インポーター役員
このお話はそこそこノンフィクションです。
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検証:
当時私はこのブースの近くで遠目に面白おかしく見ていたので詳細はすべて見てませんが、たしか◯◯◯ー◯のムルソーか何かに容疑をかけていたようです。
余談ですがこのA氏、別の試飲会ではボルドーのフューザルブランか何かに同様の容疑をふっかけており、その後試飲会から出禁になりました。
どうやら、
・たっぷりと豊かな果実感
・上質なフレンチオークでの熟成
・上記のワインがシャンブレされてアルコールが前面に出てきている
上記の特徴をブショネと誤認する傾向があったようです。
私が今もリスペクトするソムリエがいます。
ともに働き、苦楽をともにしました。
彼は自他ともに認める「人間ブショネ探知機」でした。
セミナーで使用する大量のワインのブショネも秒で検知します。
軽度の症状も妥協せずゲストには出しませんでした。
グランヴァンで発生しても容赦無い返品をしてきます。
すべてはお客様に健全なワインを提供するというソムリエの矜持。
そんな抜群のテイスティングセンスを持ちながら、彼はブラインドテイスティングにはそれほど興味はなかったようです。
確かに。
品種を当てより、ブショネを判定できる「人」が大事なことなのかもしれませんね。
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